読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Book review 〜春風駘蕩〜

気に入った本の書評・感想や本関連の話題を書いていきたいです。

等伯慕影

桃山時代、常に画壇のトップに在り続けた狩野派を一時脅かした画人がいる。

 

それが、本作の主人公 長谷川等伯 だ。
物語の等伯は他人を顧みず、自分の信じた画業に邁進する人物として描かれている。

 

等伯慕影」は同短編集に収録されている「永徳翔天」と時代的にも重なり、両作に共通する登場人物も多い。そのため、「永徳翔天」では触れられなかった人物の前史が明らかになるなどの楽しみもある。

 

さて、本作の読みどころの一つに、高野山成慶院所蔵の長谷川等伯作「武田信玄像」の解釈がある。この武田信玄像に描かれる人物は、髷を結っている点や、脇差二つ引両の家紋が入っている(武田家の家紋は四ツ割菱)点などから、畠山義続ではないかとも言われて久しい。この武田信玄像に描かれた人物が誰なのか。本作では、物語の中でひとつの解釈が為される。そして、その一件が等伯の人間性に終生影を落とすことになっていくのだ。

 

f:id:syumpu16:20160712190214j:image

長谷川等伯 「松林図」

 

白い闇に囚われ、影が生じる

黒と白の対比が印象的に映る作品だ。

 

 

乾山晩愁 (角川文庫)

乾山晩愁 (角川文庫)