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Book review 〜春風駘蕩〜

気に入った本の書評・感想や本関連の話題を書いていきたいです。

下の人

悲鳴とか 、絶叫とか 、号泣とか 、そんなんじゃないし 。
啜り泣き 。
しくしくしくしく 、偶に洟を啜り上げるんだ 。声なんか 、掠れたような 、何か擦るみたいな 、そんなか細いのしか聞こえないから 。だから 、余計気になる 。うるさい。  no.704/2646

ある日、下から啜り泣きが聞こえた。
分譲マンションの一階である。
どうもベッドの下から聞こえてくるので覗いてみると、そこに、大きな、歪んだ顔があったという話。


この作品も、主人公の女性の一人称で語られる小説だ。

ベッドの下に顔があるという異常に対し、ただ不快の念を抱くだけで、排除しようとはしない。

これに読者は違和感を抱くのだろうが、ベッドの下に顔があるなどという事は、“普通”あり得ない。故に、ベッドの下に顔があった場合、“普通”どうするかなどはわからないのだ。そのような、決して答えの出ない、違和感の集積そのものが本作品の一つの面白味だろう。