Book review 〜春風駘蕩〜

気に入った本の書評・感想や本関連の話題を書いていきたいです。

異説 晴信初陣記

「なにか方策があるのか 、言って見るがいい 」
信虎はなかば軽蔑を面に浮べて言った 。 
「このような要害にある城は尋常な攻め方をしても落ちるとは思いません 」 
「なにっ ! 」
信虎は晴信の意外な答え方にびっくりした 。 no.522/2630

武田三代 (文春文庫)

武田三代 (文春文庫)



武田晴信の初陣の物語。
晴信とは、信玄の諱である。

晴信は当時16歳。
元服を済ませたばかりであり、板垣信方の推薦で海ノ口城攻めで初陣を飾ることになる。


本作は、“異説”と題しているように、通常とは少々異なった趣向の作品となっている。
というのも、忍びの者とも言える人物が登場するのだ。

後年、信玄は透破(すっぱ)とよばれる忍びの者を使役したことは有名だ。
ちなみに、隠し事を暴いて公然に晒す事を「すっぱぬく」というが、一説にはこの透破が語源とされる。

さて、忍びの者が登場するからといって、本作は忍者小説ではない。
飽くまで、晴信の初陣にスポットを当てて、晴信の物語に終始している。
作中の晴信は頭脳明晰で、海ノ口城攻めの方策を滔々と進言する。
そして、実際に勝利を収めるのだ。

小説の話ではあるが、その勝利の方法が単純ではない。
初陣であるにもかかわらず、さも戦慣れしているかのような勝利を収め、後年の謀将信玄の素地を垣間見せるのだ。


異説と題し別の側面からスポットライトを当てたことによって、晴信初陣の別側面が浮かび上がった短編作品となっている。