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Book review 〜春風駘蕩〜

気に入った本の書評・感想や本関連の話題を書いていきたいです。

信虎の最期

書評 戦国 レビュー 武田三代 武田信虎 武田勝頼

「先先代様はおいくつになられるかな 」勝頼は逍遥軒に聞いた 。さようと答えて 、しばらく頭の中で父の年齢を数えていた逍遥軒は 、 「たしか八十一歳だと思います 」と言った 。勝頼の顔に一種の感動のようなものが流れた 。彼は祖父の信虎が 、なぜ追放されたか 、家臣たちに訊いてよく知っていた 。だがそれは飽くまでも話であって実感としてではなかった 。遠い昔の話として聞いていた 。その遠い昔の人がいま帰って来たのである 。
No.34/2630

武田三代 (文春文庫)

武田三代 (文春文庫)




武田信玄の父親、武田信虎を主人公とした珍しい小説。
話は、甲陽軍鑑をベースにし、信虎が高遠城に帰ってきたところから始まる。

時に信虎、81歳。
信玄のクーデターにより追放されてからゆうに33年振りの帰還である。

信虎は老境に至ってもなお、身体創建で直情的という、往年のままの性格で描かれている。
重臣らからすれば、一々の嫌味に対しても無下にはできず、迷惑千万であったろう。


物語は比較的淡々と進んでいくが、信虎、勝頼、重臣たちの心情描写が細かく、実際に隣席しているかのような空気感があり面白い。

ところで、信虎追放後に信玄が周囲に配した人物は、信虎が手打ちにした人物の名跡を継いでいる者が多いことに気づかされる。
信玄は父親が振り撒いた災いを福と成し、戦国最強と呼ばれた軍団を作り上げていったのだ。

如何な災いにも希望を持って、それをプラスに転じていくその信玄の姿勢には感服である。