Book review 〜春風駘蕩〜

気に入った本の書評・感想や本関連の話題を書いていきたいです。

喧嘩草雲

草雲もまた、なみはずれた気魂をもって生れている。が、草雲のばあいは、気魂は気魂、画技は画技、武術は武術で三者ばらばらの他人であった。
三つが、溶けてない。
p.159

馬上少年過ぐ (新潮文庫)

馬上少年過ぐ (新潮文庫)



幕末から明治にかけての画家、田崎草雲が主人公。
司馬遼太郎の作品でも、画家をテーマにした作品は珍しいのではないだろうか。

若い頃の号を「梅渓」といい、「あばれ梅渓」と渾名された。
後に「草雲」の号を用いているので、タイトルの「喧嘩草雲」とはこれに比してのものであろう。


小説では「草雲」の雅号は妻のお菊がコレラで亡くなった事を機に変えたとあるが、実際はお菊が亡くなる以前に用い始めたようだ。ここは、小説故の改変か?

ところで、喧嘩といえば戦などと比してまだ可愛いものだ、などと思っていたがこれが違う。
段々エスカレートしていき、行き着くところまで行ってしまうのだ。
その際限を知らぬ無鉄砲さが良い。

本小説では、田崎草雲という知名度の低い人物が取り扱われているために、結末がわからないというミステリ要素も楽しめた。

これら一連の物語が創作ではなく、一個の人間の人生なのだから凄いものだ。
人間の無限の可能性というものを、垣間見た気がした。